軽自動車としては唯一の本格的4WD乗用車である、スズキ・ジムニーが2018年におよそ20年ぶりにフルモデルチェンジを果たしました。
20年という長いモデルライフもすごいですが、ジムニーの伝統を守りながら最新の安全装備などを充実。
何よりそのタフなルックスに磨きをかけたため、メーカーの販売目標を大幅に上回る注文が殺到し、今では納期が1年~1年半(!)とも言われています。
しかし、ジムニーの事をよくご存じない方は、
- ジムニーの何がすごいのか
- ジムニーはそんなに素晴らしい車
なのかという疑問が沸いてくることでしょう。
そこでこの記事では正直、ちょっと過熱しすぎていると思われるジムニー人気を冷静に分析し、新型ジムニーの特徴や素晴らしさ、価格、燃費などと一緒に課題をご紹介しようと思います。
目次
新型ジムニーの価格や燃費は?3つの特徴について
新型ジムニーは通算で4代目。
先代は1998年に軽乗用車の規格が変更(安全対策のため、全長が+100mm、全幅が+80mmとなった)されたタイミングでフルモデルチェンジされたので、それ以降20年の長きにわたり生産されていました。
気になる新型ジムニーの価格は
- 4AT車で1,555,200円~1,841,400円
- 5MT車で1,458,000円~1,744,200円
と、軽自動車としてはかなり高価になります。
また、燃費に関しては下記の表をご覧ください。
WLTCモード | 5MT車 | 4AT車 |
---|---|---|
総合 | 16.2km/L | 13.2km/L |
市街地 | 14.6km/L | 11.0km/L |
郊外 | 17.5km/L | 13.9km/L |
高速道路 | 16.5km/L | 14.2km/L |
正直、そこまで燃費が良い車ではありません。
まー、そこまで燃費にこだわる方が乗る車でもないのですが、それでも燃費は悪い方です。
そんな新型ジムニーの大きな特徴は下記の3つ。
- 強靭なフレーム構造
- パートタイム式4WD
- 安全性と快適性の大幅な向上
強靭なフレーム構造
引用:http://www.suzuki.co.jp
ジムニーは世界最小の本格的4WD 車であり、最大の特徴はラダーフレームを使った強靭なボディ構造とパートタイム4WDにあります。
通常乗用車は車体に大きな負荷がかかることはなく、鉄板で出来たボディのみで十分な剛性を確保できるので、エンジンやサスペンションというパーツを、ボディに直接取り付けており、このようなボディ形式を「モノコックボディ」といいます。
1950年代頃までは十分な剛性を持つボディを製作することが難しかったので、エンジンやサスペンションをフレームという土台に搭載し、その上にボディをかぶせるやり方で作られていました。
現在でも一部の乗用車とほとんどのトラック(重量物を積載する車)はこのフレーム構造を採用しており、フレーム分の重量はかさむものの、大変頑丈な構造になるため高い信頼性を誇ります。
ジムニーは本格的な4WD車であり、悪路で4つのタイヤが大きくストロークし、ボディに大きな負担がかかることを想定して、伝統的にフレーム構造を採用しており、新型ジムニーではそのフレームそのものも大幅に強化して剛性を高めています。
パートタイム式4WD
また現代では非常に珍しい存在になった「パートタイム式4WD」を採用。
これは走破性を重視しているだけでなく、1500ccエンジンを積んだシエラは世界中で販売されるため、シンプルなメカニズムで修理しやすい構造にしているためだと思われます。
引用:http://www.suzuki.co.jp
ちなみにパートタイム式4WDとは、通常はFR(後輪のみ駆動)で走行し、悪路に入った時のみスイッチで4WDに切り替えるもので、ジムニーには更に副変速機まで装備されており、通常の「4H」モードよりさらに駆動力を発揮できる「4L」モードを使うことが出来ます。
安全性と快適性の大幅な向上
更に、新型ジムニーは自動ブレーキなどの安全性能を大幅に向上。
縦置きエンジンによる長いエンジンルーム(衝突エネルギーをしっかり吸収できる)や丈夫なフレームにより、軽乗用車の中でも高い安全性を確保しています。
室内の快適性も大幅に向上し、後席は相変わらず緊急用レベルの広さですが、2人乗りであれば大きな荷室を使えるようになり、車中泊も可能なレベルとなっているため、山奥やスキー場などを訪れる際も大変便利で快適に乗ることができるでしょう。
快適性とはやや異なりますが、個人的には外観も先代より大幅に向上し、道具としての価値観を大いに高めていると思います。
ボディカラーはイエロー、ベージュ、ブルー、モスグリーンなど基本色が7色、それに屋根のツートーン仕様を組み合わせて、最大10色が選べます(グレードにより設定色が異なるため、詳しくはジムニーのHPにてご確認ください)。
ジムニーの歴代はどうだった?実は世界でも超有名
ジムニーは2020年で50周年を迎える長寿モデルで、世界中に輸出されているワールドモデルでもあります。
初代ジムニー(1970年~1981年)の特徴
ジムニーの初代は1970年に発売され、当時の軽乗用車規格に基づき、
車体 | 大きさや重さ |
---|---|
全長 | 2995mm |
全幅 | 1295mm |
全高 | 1670mm |
車両重量 | 600㎏ |
と大変小柄で、エンジンは空冷2ストローク2気筒359㏄、わずか25馬力でした。
ボディは幌型で、ドアもなく、フロントウインドも前方に倒すことができ、トランスファーからウインチなどを駆動する動力を取り出すことができる、まさに本格的な「作業車」でした(商用車の4ナンバー登録)。
しかし、その小型軽量を生かした悪路走破性は素晴らしく、軽自動車登録の経済性も歓迎。
当時は
- トヨタ:ランドクルーザー
- 日産:パトロール
- 三菱:ジープ
などの大型4WDしか存在しない市場で、メーカーの想定を大きく上回るヒットとなったのです。
初代から輸出向けモデルが設定され、800㏄エンジンを積んだ小型自動車規格の「ジムニー8」もごく少数ながら国内販売されていました。
2代目ジムニー(1981年~1998年)の特徴
1981年には初のフルモデルチェンジを迎え、軽自動車規格の変更に伴い、
車体 | 大きさや重さ |
---|---|
全長 | 3195mm |
全幅 | 1395mm |
全高 | 1700mm |
車両重量 | 730㎏ |
となり、エンジンは水冷2ストローク3気筒539㏄で、28馬力となりました。
ボディも現行のようなバンタイプ、幌型でもドア付きなど多彩なバリエーションがあり、後日ターボエンジンやAT仕様。
そして輸出用の1300ccエンジンを積んだモデル(後日シエラと命名)も追加され、現在のジムニーのスタイルが確立されました。
また、乗用車登録の5ナンバーモデルが追加されたのもこの2代目です。
3代目ジムニー(1998年~2018年)の特徴
長きにわたって生産された2代目も、1998年の軽自動車規格の改定により、3代目にモデルチェンジしました。
車体 | 大きさや重さ |
---|---|
全長 | 3395mm |
全幅 | 1475mm |
全高 | 1680mm |
車両重量 | 970㎏(初代の1.5倍) |
となり、ボディはバン型1種類に統一されました。
エンジンは水冷4ストローク3気筒657㏄で、ターボにより64馬力を発生、4速ATと組み合わせられます。
3代目は完全な乗用車としてのジムニーを確立したモデルで、タフな道具としてのイメージはやや薄らいだものの、小型車登録のライバル車に負けない快適性を備え、モデル末期でも月間数千台を販売する人気車種に成長。
3代目はなんとおよそ20年間も生産され、2018年に4代目の新型ジムニーにバトンタッチされたのです。
新型ジムニーの機能や内装から考えるメリット・デメリット
では、次に新型ジムニーのメリットとデメリットですが、それぞれをまとめるとこのようになります。
- 小型軽量である
- 優れた駆動システム
- シンプルで強靭なサスペンション
- 乗り心地と操縦安定性が悪い
- フルタイム4WDでない
- 狭く使いにくい室内
- 燃費の悪さとパワー不足
それぞれ解説していきます。
メリット①:小型軽量である
最大の特徴として、小型軽量であることは世界中の4WD車の中でNo.1と言えるでしょう。
幅が約1.5mしかないので、大人が両手を広げたぐらいの幅の道でも通ることができるので、わたしも登山の最中に「えっ!こんなところまで入ってきたの?」と言いたくなるジムニーに何度か遭遇しています。
初代に比べれば重くなったとはいえ、いまだに1トン強の軽量。
重さで悪路に埋もれてしまう恐れが小さく、ラダーフレームによる高剛性ボディは、悪路でサスペンションがしっかり働く土台となります。
引用:http://www.suzuki.co.jp
更にボディの大きさの割には大径のタイヤなので、その走破性は世界有数のレベルと言われています。
メリット②:優れた駆動システム
走破性のもう一つの決め手となる4WDシステムは、前述のとおりパートタイム式4WD。
4WD時には前後の駆動系が直結となり、パワーロスせず駆動力を路面に伝えます。
また、ブレーキLSDトラクションコントロールを採用。
引用:http://www.suzuki.co.jp
悪路でタイヤがスリップして駆動力が抜けてしまう時、そのタイヤに独立してブレーキをかけることで駆動力のロスを防ぎ、残りのタイヤに最大限の駆動力を分配して悪路を脱出します。
メリット③:シンプルで強靭なサスペンション
丈夫さを重視したシンプルなリジット式3リンクリアサスペンションは十分なストロークを確保し、起伏の大きな悪路でも路面と床の間に十分な空間を保ちます。
引用:http://www.suzuki.co.jp
これらのメリットは大変貴重なものですが、裏返しのデメリットも多々あります。
デメリット①:乗り心地と操縦安定性が悪い
悪路ではメリットのあるリジット式サスペンションですが、通常の路面では路面の凸凹によるショックを吸収しづらく、カーブではタイヤと路面の設置が不安定になり、コーナーリング性能が低下するデメリットがあります。
デメリット②:フルタイム4WDではない
パートタイム式4WDは通常の路面で4WDにすると、カーブで意図せずブレーキがかかるような状態(タイトコーナーブレーキング現象)になり、ギクシャクしてうまく走ることができません。
これは前後の駆動系が直結していることが原因。
カーブを曲がる際、スピードを落とすためブレーキをかけるので、前輪に荷重がかかりタイヤが押しつぶされ、タイヤ径が小さくなるため、タイヤの回転速度が上がります。
逆に後輪は荷重が抜けるため、タイヤ径が大きくなって、タイヤの回転速度が下がってしまうのです。
これにより前後で回転速度の差が発生し、それが駆動系で直結されているため前輪の回転が抑えられ、ブレーキング減少となって現れるのです。
悪路であれば、タイヤと路面の微小なスリップにより、タイヤの回転速度の差はブレーキング現象になって現れるほどのことはないのですが、通常の路面では深刻な問題になります。
フルタイム4WDは悪路以外でも走行安定性に大きな影響を与えるので、メーカーは本来ならフルタイム4WD+センターデフロックという方式にしたいのだと思います。
しかし、これはコストがかかるしトラブルの可能性もわずかながら増えるので、ジムニーの商品性の優先順位を検討した結果、この方式は見送られたと思われます。
デメリット②:狭く使いにくい室内
小さな車体は狭い道でも走れるメリットがあります。
しかし、室内の狭さはやむを得ないところで、室内長はワゴンタイプのワゴンRやハスラーに比べても200㎜程度短く、4人乗り時の荷室はほとんど物が積めないぐらい奥行きが短いです。
引用:http://www.suzuki.co.jp
ジムニーは2ドアなので、後席に乗り込むときは前席の背もたれを倒して、足を差し込むように乗らなければなりません。
雨の日など困ることがあるでしょうし、後席自体も大人には短時間・短距離の移動が限界の広さで、家族で使うのは子どもが小学校入学前までが限度だと思います。
前後席の背もたれを倒すとフラットになるなど色々と工夫はされていますが、基本的には「2人乗り+352L の荷室」で使うことになるでしょう。
引用:http://www.suzuki.co.jp
ただ、荷室の床面が高いので、リアのタイヤハウスの出っ張りがなく、荷室の横幅を目一杯使うことができるのは大きなメリットです。
デメリット④:燃費の悪さとパワー不足
やむを得ないかもしれませんが、燃費も決して良いとは言えません。
WLTCモードで
- 5MT車は16.2km/L
- 4AT車は13.2km/L
であり、これは前述のワゴンRやハスラーの半分程度で小型乗用車並みです。
エンジンは最新のターボエンジンで、パワーは64馬力と自主規制目一杯ですが、排気量が軽自動車枠の660ccのため、回転を上げてパワーを稼ぐタイプ。
引用:http://www.suzuki.co.jp
アルト・ワークスのようなスポーツモデルなら良いのですが、ジムニーのような低回転で大きなトルクが欲しいタイプの車にはあまり適していないので、どうしてもパワー不足を感じる走りになります。
特に高速道路は全体にギア比が低いこともあり、スピードが伸びず騒音や振動も今どきの軽自動車としてみても快適とは言えません。
新型ジムニーの納期は1~2年は掛かる?遅い理由について
新型ジムニーを語る上で気になるのが「新型ジムニーの納期が遅い」ということ。
実はこれには理由があり、それは初期の生産台数が少ないことがあげられます。
新型ジムニーは2018年7月5日に発売されましたが、その生産計画は年間15000台。
普通自動車になるジムニーシエラ(以下、シエラ)に至っては、年間たったの1200台です。
それに対して、発売時に
- ジムニー:16000台
- シエラ:3600台
の注文が殺到したため、現在でもおよそ1~2年の納期を抱えており、スズキは2019年よりジムニーとシエラの増産体制を取りました。
これにより納期は短縮されると思われますが、それでも数か月待ちの状態はしばらく続くでしょう。
ジムニーシエラとジムニーの違いは?
引用:http://www.suzuki.co.jp
ジムニーには前述の通り、ジムニーの車体に1500㏄エンジンを積んで小型自動車とした「ジムニー・シエラ」という兄弟車種があります。
といっても、ジムニーの輸出用はすべてこのシエラであり、日本国内向けの特殊な商品が軽自動車枠の「ジムニー」という言い方もできます。
シエラならジムニーの不満点の多くを解決できる!
シエラは4気筒1500㏄エンジンを積んでおり、出力は60%UPの102馬力。
トルクは36%UPの13.3kg/mとなり大幅に強化されます。
パワーに余裕があるのでエンジン回転数が下がり、3気筒から4気筒になるので振動や騒音も小さくなるため、特に高速道路の快適性は大幅に向上しています。
燃費も5MT車は15.0km/L、4AT車は13.6km/Lで、4AT車はエンジンが2倍以上大きくなったのに、むしろ燃費が向上しており、軽自動車枠のエンジンでは相当無理があったと考えられます。
また、基本的なボディは変わらないものの、オーバーフェンダーを装着して幅広タイヤを装着しており、ジムニーの175/80R16から195/80R15に変更されることで、悪路の走破性も向上しています。
引用:http://www.suzuki.co.jp
トレッド(タイヤの左右の距離)も130mmも拡大されており、左右方向の安定性はジムニーに比べて大幅に向上しています。
外観もオーバーフェンダーや大型バンパーにより、一層本格的な印象になっているので、どうしても軽自動車枠でなければ問題がある場合以外は「ジムニーシエラ」をおすすめします。
価格は
- 4AT車で1,857,600円~2,019,600円
- 5MT車で1,760,400円~1,922,400円
となり、ジムニーより20万円~30万円ほどアップしますが、価格差以上の大きな価値があります。
結論『新型ジムニーは買いでは無い』
結論から言えば、ジムニーはおすすめしません。
なぜならジムニーは本格的な悪路走行、雪道走行が必要な人に必要な車で、その性能のために得られるものも多いですが、失っているものもまた多いからです。
特にパートタイム式4WDは、通常は後輪駆動の2WDとして走行するため、グリップ力の低いオフロード用のタイヤ、重心が高いことによる不安定さ。
リジットサスペンションによる運動性能の低さも相まって、一般の路面では決して快適でも高性能でもありません。
自動車ユーザーの99%は一般的なフルタイム4WDで悪路走破性については十分であり、常時(フルタイム)4WDで走行することによる走行安定性は高速走行や雨天時などに大きなメリットがあります。
通常の雪道走行であれば、スズキ・ハスラーのように最低地上高を高めた(175mm、ワゴンRは150㎜)モデルの4WDで十分だと思います。
引用:http://www.suzuki.co.jp
乗り心地や室内の広さ・使いやすさはホンダ・S660などの特殊は車を除けば、ジムニーよりずっと快適でしょう。
ただ、これはジムニーという車を否定しているのではなく、ジムニーはそのスタイルや走行性能など、とてもよくできた素晴らしい車だと思います。
ジムニーの性能が必要ない人が、スタイルやジムニーの性能にあこがれて購入する場合は、前述のジムニーの欠点をすべて受け入れる必要があり、場合によっては早期に買い替えることになるかもしれません。
ただ、当分ジムニー人気は続くと思われるので、買い替えるときも高値で売却できるでしょう。
もし、購入される際はシエラも十分に検討されることを強くおすすめします。
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